はなちゃん
うさぎは体臭がない.
うさぎはしゃべらない.
自己防衛のためにそうなったのであろう.
今日は,はなちゃん(うちで飼っているうさぎ)にとって大変な日であった.
いつももはゲージの中にいるのだが,休みの日はネットを張って庭に放している.
庭には,今まで何回か猫がやって来たことがあるが,その都度追っ払っていた.
しばらく姿を見なかったので,すっかり安心していたのだが.
今日,ふと庭を見ると,ウッドデッキの手すりのところに猫がいるではないか.
しかも,今まで見たことのないような特大のやつである.
そして,その視線の先には,はながいる.いま,まさに飛び掛ろうと狙っているところだ.
これはいかんと,私があわててウッドデッキに飛び出したのと,猫がはなに飛び掛ったのは同時であった.
そして,気づいたはなが逃げ,猫がはなを追いかけ,私が猫を追いかける.
そのうち猫が身の危険を感じはなを追いかけるのをやめ,猫と私の追いかけっこになった.
ところが庭には網が張りめぐらしてあるので,そう簡単には逃げられない.
私ははなの身の危険を案じ,猫が逃げ切るまでひたすら追いかけたのであった.
結局,はなには何事もなかった.猫も無事に逃げた.怪我をしたのは私だけである.
よく覚えていないのだが,家人の話によると,部屋からウッドデッキへ出た私は,雄たけびを上げながら腰ぐらいの高さの二本の洗濯ロープを立て続けにとび越え,さらにウッドデッキの手摺に片手をついて庭へと横とびに飛び越えたのであった.
ウッドデッキの手摺は床から胸ぐらいの高さ,飛び越えた先の庭の地面からは頭のてっぺんぐらいの高さである.
ところが,そんなにうまく手摺を飛び越えられるはずもなく,途中で足をひっかけ,そのまま庭へと勢いよく倒れこんだ.
これは大事になったと思ったそうである.しかし,何事もなかったように再び起き上がり走り出したのだそうだ.
怪我はたいしたことなく,擦り傷程度である.ほんとうに,どこからこんなパワーが生まれてくるのか不思議である.
それよりなにより,ふだん庭に目をやることなどめったにないのに,これが虫の知らせというものであろうか.
当のはなは,今日はおとなしく私に抱かれていたが,明日になればすっかり忘れてしまうのである.
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